2007年7月25日水曜日

本当の人生を見出すまで

私は本当の人生を見出すまで空しい人生を送っていた。まず私は体が弱かった。だから二十歳まで生きられるのかどうかを危ぶんだ。そんな私でも、戦争の影が濃くなってくると、いずれは徴兵検査で引っ張り出されると思い、それならばいっそのこと将校となる道を選ぼうと思って、旧制の中学を卒業すると、陸軍経理学校を受験した。すると合格して、まだ若冠17歳で士官候補生となってしまった。予科を終え、本科生になった時、日本は戦争で負け、心ならずも復員して帰って来た。

今まで教えられてきたすべてのことは偽りであって、何が本当のことなのか分らないまま、それでもどこかに真理はあるはずだと思い、それを求め続けた。

時代は変り、もう一度人生を一からやり直そうと思い、終戦の翌年、大学に入ったのだが、私の心の中にポッカリと空いてしまった空洞を埋めるために、本を求めては読んでみたり、修養団と呼ばれるような所へ行ってはみたけれども、私の空虚な心を満たしてくれるものは見出せなかった。

戦争中は、敵性語と言って忌避されていた英語をもう一度見直さなければならなくなった時、士官候補時代の友人が、英語をただで教えてくれる所があると言って連れて行ってくれた所が、教会の英語バイブル・クラスであった。私などは昔英語を勉強したことはあったが、そこでは英会話などという科目は全くなかったので、何を言っているのかさっぱり分らなかった。

そこへ教えに来ていたアメリカ兵(GI)が、私たちを週末に開かれているGIゴースペル・アワーという集会に誘ってくれるのだが、聞いてみると、キリスト教の集会だと言うので、断り続けていた。ようやく行こうと言って彼に答えたところ、当日になり、あいにく風邪を引き、熱がある。しかし、約束した以上行こうと思い、父の外套を借り、マスクをして出掛けて行った。

その晩、私は初めてキリストの福音を聞いた。そして、それを信じたのである。その時、私の心の中に思わぬ変化が起った。私のそれまで罪とも思っていなかったものがはっきり罪と示され、それらがすべて赦されたことを知った。心は満たされ、死に対する恐れが全く消え、引いていた風邪もいやされていた。この日から私は本当の人生を歩み始めることができた。それは、1946年11月30日のことであった。