2008年3月26日水曜日

健康について 4/8

1984年9月19日の日本経済新聞の朝刊は、当時国立がんセンターの疫学部長をしておられた平山雄博士が9月18日にまとめた疫学調査の結果の発表について報じていた。これは、生活習慣とがん発生率の関係について総合的に調べた調査であって、世界においても初めての疫学調査であった。ここで、非常に注目されるべきことは、緑の野菜ががんの予防にも消去にも大きな効果があるということである。これは、緑の野菜の中にある葉緑素にその効果があるということである。

それでは、その葉緑素とはどういうもので、どういう働きをするのだろうか。葉緑素というのは、植物の中に存在する、人間で言えば血にあたるものである。それは、植物と人間におけるそれぞれの役割が極めてよく似ているということと、この両者の化学構造が良く似ているということから、そのように言える。それだけでなく、葉緑素は、血液を新しく造り出す素材として極めて有効であるという研究がドイツのビュールギーとその門下の研究者によってなされたことが、この両者の関係を深めるのに役立った(1932年)。

葉緑素も血色素も、どちらもポルフィリン核構造をしていて、ただ違うのは、葉緑素の方は、中心原子がマグネシウムであるのに対して、血色素の方は鉄であるという点である。

葉緑素と血色素は構造が似ているだけでなく、その働きもよく似ている。葉緑素が行なっている光合成は、炭酸ガスと水を使って糖を作り出すわけだが、血色素が重要な働きを担っている体細胞の中の組織呼吸とはちょうど逆で、ここでは糖を水と炭酸ガスに分解し、その過程でエネルギーを引き出す働きをする。このことから分ることは、この両者は補い合うように出来ているということである。つまり、血色素づくりの母核としての物質、これが葉緑素であるわけである。

葉緑素は、疲労のために動かなくなった神経や筋肉、心臓の働きを回復させる働きをし、また理想的な制菌剤でもある。またがんにも効く。

葉緑素のポルフィリンは、人間の腸の壁を通して赤血球という赤い色素のヘモグロビンのポルフィリンに移行して行く。このヘモグロビンのポルフィリンは、体細胞の生存、とくに組織呼吸に主役を演じているヘミン酸素のポルフィリンとして受け継がれていく。だから、葉緑素の作用は全身的なものになり、緑の野菜を多く採る人は、がんになりにくいし、がんになっても治癒しやすいのである。